第46回 鳥羽パールレース 通信担当のレポート

『ルートリス』 菱 田



ベテランの林さん(メリーサン)と今回初めて体験することになった私の72時間のダイジェストです。

7/21(木) 12:00 五カ所湾VOCへ到着、本部艇はおなじみの「シャングリラ」です。
ラジオチェックのため国際VHFと衛星携帯電話による通話テストを行う。

17:00 この結果を艇長会議の安全セミナーで報告することとしていた。

21:00 衛星携帯電話の不具合解消策やスタートに向けてのスタッフミーティング

今回通信手段として衛星携帯電話が取り入れられた。
スパイ映画を見ていると、ピポパのボタン一つで世界中のどことでも通話できるすぐれものと思っていた。少し事前調査をしてみる
と、ドコモ、イリジウム、エイシスなど数社が関わりレンタルできるが、それぞれカバーする地域に特性があり、人工衛星の数量に
よっても通話品質に差があるらしい。
また、会社間の接続についてはローミングなど聞き慣れない専門用語による説明がなされていたが、通話に関する不具合やこの
取扱いについては何ら記述されていなかった。
多分皆さんもこの程度の予備知識で、当日のラジオチェックというぶっつけ本番を迎えられたと思います。
本部艇の搭載機はドコモ製、ノートパソコンの半分程度の本体と受話器で構成されずっしりと重い。
アンテナを南40°に維持していないと「圏外」表示となってしまう、結構シビアなものであった。
電源を入れ、テストコールを始めた途端に不具合が発生した。ドコモ同士は通話できるが他社のものとは接続できない。
取扱説明書にもこのあたりの記述がないので、これからどうなるのか内心不安が募った。
結局、衛星携帯電話は不具合の状況を艇長会議で報告し、翌朝までに対応策を公式掲示板で周知することとした。
一方、国際VHFでは、できるだけ多くの艇が交信できるよう、本部艇は集団の中央を併走していくように要望も出された。また、
本部艇のアンテナ位置はスターンからマストトップへ改修されており、今回はかなりの広範囲で交信できるものと期待がもたれ
た。艇長会議が終了、翌朝8時までという限られた時間の中で解決策を迫られ、関係者がそれぞれ情報収集に努めたところ、
会社別の識別コードを突き止めることができた。しかし、悪いことは重なるもので、この識別番号などを掲示した内容にミスプリ
ントがあったことが、スタート後に知らされ、私は責任の重さを痛感した。

7/22(金) 10:20 自衛艦「のとじま」の号砲により、ゼネリコ後再スタート。
今後は12:00、18:00、24:00と6時間ごとにロールコールを実施していく。

12:00 始めたばかりのロールコールで「シュビシュバ」さんから電話番号のミスプリントを指摘された。艇長会議の席上でも、参考
メモとして本部艇の衛星電話番号を記した別の用紙を配布しており、それと掲示板で周知した下4桁が間違っていた。
「ダンシングビーンズ」さんとも、これまでずっと未通信であったので、別の個人携帯でこの旨を連絡し、再度試みたところ、衛星
携帯は見事に機能を回復することができた。
この後、ミスプリントを何とか各艇に伝えるべく利用できたのは普通の携帯電話であった。陸上からの通話圏内であったことも幸
いして18:00の定時連絡までに善処でき、林さんと二人ほっと胸をなで下ろすことができた。

18:00 国際VHFはアンテナが高くなったせいもあって、ほぼ完璧の交信ができた。
衛星携帯の音声は、2、3秒遅れてくる。このため、ついついこちらからもしゃべり始めてしまう。このタイミングさえうまく捉えてい
れば、やはり優れものであることを実感できた。

7/23(土) 0:00 天竜川の沖20マイルあたりは波高が高く、数艇からリタイヤの報告が相次ぐ中を、両舷に参加艇のマスト灯を認識し
ながら本船航路を横断していく。 「シャングリラ」は1ポイントリーフで機帆走を続けていたが、ラットに不調が現れたため、ひとま
ず石廊崎を目指すことになった。

7/23(土) 6:00 御前崎の沖約15マイル、風は25Kt程度、スプレーを浴びる。

7/23(土) 9:00 石廊崎の南西約18マイル、風は30Kt近くに上がるが、スライドハッチにキャノピーが付いてスプレーを防いでくれるの
で、指向性の強い衛星電話のアンテナの固定にも大助かり。「バロネス」と暫くの間併走することとなった。

7/23(土) 11:00 神子元島の南約2マイル

7/23(土) 12:40下田入港前に定時のロールコールを完了して無事接岸した。油圧系をチェックし応急手当
を施す。台風7号の情報もあり「シャングリラ」は、この後五カ所へ帰港することとなった。