「何もしない贅沢」(のつもり)と、ちっちゃな南海帆走

3月22日から25日4日間のチャータークルージング シロートX福田


 昔々「南太平洋に点在する、万を超す島々を自分のヨットで気ままに巡航する。」そんな夢
を見た若者がいつしか仕事に追われ、加えて「大きなお世話?」で50才だった定年が60才
にまで延び、また、組織の階段に比例して体力はマイナスへ……。振り向けば自信も減退、
追い打ちにガンが発症、長距離帆走の夢はもうジリ貧でした。そんな老人が思い立ったのが
今回の計画「体を運んで現地のフネに乗せる」つまりチャーターヨットを使い短期間でも南太
平洋をクルージングすることでした。
体調、通院、現地日程、何度かの計画変更を経てやっとこの3月に実現できました。この"夢
の一部"を後続者の参考になれば……と、紹介させていただきます。とは言え、今回のクルー
ジングは一口で言うと「リーフに囲まれた礁湖の内海を女房同伴で帆走する」という軟弱航海
であったことをお断りしておきます。
 場所は7つの諸島から成るフレンチポリネシアで皆さんご存知の「タヒチ」ではなく、同じポリ
ネシアの中のツアモツ諸島、ランギロア環礁です。ここは成田からタヒチ島まで11時間、国内
線に乗り換えて1時間ちょっとで到着、北東350kmに点在する78個の諸島の一つです。タヒチ
島などのソシエテ諸島に見られる火山島(美しい「バリハイ」の世界)とは異なり、最大標高1m
に満たない小島が点々と連なる、まるでネックレスを楕円形に広げたような、外周200kmにお
よぶ珊瑚礁です。
 小さな飛行機(48人乗)がランギロア島に近づくと、環礁が真っ青な布に緑のインクをポツッ
ポツッと落し、白く縁取りを施したように見え、その内と外の海色の濃淡はとても美しい眺めで
す。高度が下がると緑のニジミはヤシの木の茂る陸地です。飛行場のある一番大きな島でさ
え幅1.7km、長さ4.2kmほど、7つの小島を橋で結んで一つの村が形成されているのです
 このように点在する環礁の内側、今回クルージングしたラグーンですが、その礁湖は長さ80
km、幅20kmと世界で2番目に大きく、一方の環礁から向いを見ても水平線の彼方です。ここ
が囲まれた「内側の海」であるとは実感できません。環礁を形成する小島(モトウ)は240以上
あり、ホアと呼ばれる水路(隆起珊瑚の低い部分)で内外海がつながり、ダイバー憧れの島と
して有名です。島の沖合いに停泊したヨットの舷側にも、ムッチャ多くの熱帯魚が集まり、イル
カが泳ぎ、サメもすぐさま寄って来ます。帆走中には何度も鳥山と遭遇、1mもあるカツオのジャ
ンプも見られます。ここはスノーケリングだけで存分に海の世界を堪能できる、まさにトップクラ
スのダイバー天国(映画「アトランティス」の舞台)なのです。